北アルプス:烏帽子岳〜針ノ木峠

烏帽子岳〜針ノ木峠地図  7月24日から2泊3日で、北アルプスの烏帽子岳から蓮華岳まで歩いてきました。当初は、針ノ木雪渓を登って針ノ木岳を往復し、七倉に下る予定でした。メンバーが変わって足が揃ったため、ちょっとハードなルートになりました。北アルプスとしては標高が低く展望はあまり期待していませんでしたが、木が茂った船窪岳以外は、すべて360度の展望が得られる山々で予想外の収穫でした。

【日 程】 1994年7月24日〜26日
【山域名】 北アルプス
【山 名】 烏帽子岳、南沢岳、不動岳、船窪岳、七倉岳、北葛岳、蓮華岳
【ルート】 高瀬ダム〜烏帽子岳〜船窪岳〜蓮華岳〜針ノ木峠〜扇沢
【天 候】 晴れ
【メンバー】 S21歳男(登山は初めて、自転車が趣味)、K30歳男(スキー山岳部OB)、H31歳男(よく一緒に行く友人)、私
【地形図】 1:50,000「槍ヶ岳」「立山」
【タイム】
 第1日(実歩行時間4時間15分)
 高瀬ダム6:50→10:45三角点(2208.5m)→12:25烏帽子小屋幕営地
 第2日(実歩行時間7時間40分)
 烏帽子小屋幕営地4:40→7:40南沢岳8:05→9:30不動岳10:10→12:20船窪岳12:30→14:10船窪乗越14:20→15:10七倉岳直下の幕営地
 第3日(実歩行時間 7時間10分)
 幕営地5:10→6:05七倉岳6:20→7:55北葛岳8:25→9:10北葛乗越→9:25→11:15蓮華岳12:25→13:05針ノ木峠13:50→15:35大沢小屋→17:00扇沢

 高瀬ダムのトンネルを抜けて、吊橋から不動沢の上流を見上げると、荒々しい崩壊が見える。明日あの稜線を歩くのかと不安に思いつつブナ立て尾根の急登にかかる。

 テントを張った後、KとSは三ッ岳まで散歩、Hは花の撮影、私は定番の豚汁をじっくりと煮込む。

 烏帽子岳:薬師岳〜立山・剱の展望はもちろんのこと、直下に広がる池塘とお花畑がいい。水晶岳や立山の残雪は、昨年、一昨年と比べて少ない。
 烏帽子小屋から南沢岳を往復するパーティがいた。

烏帽子岳 リンネソウ
<烏帽子岳> <リンネソウ>

 南沢岳からいよいよ道が険しくなる。稜線の東側は下から見えたように恐ろしいほどガレているが、西側は樹林帯で道はその中を通っており、特に危険なところはない。蒸し暑い。時々、ガレの上に出ると風が心地よい。下を見ると高度感があって、もっと涼しくなる(^_^;)。

 南沢岳:なだらかな山容で、コマクサあり。ゆったりした斜面を花や景色を眺めながら登っていくのが良い。この先は山頂以外は展望の得られない北アルプスらしからぬルート。南沢岳南西のピークから360度のパノラマ写真を撮影(南沢岳からのパノラマ)。晴れてはいるものの遠望がきかないのが残念。

立山 アサギマダラ
<立山、手前の砂礫地にコマクサの群落(南沢岳)> <マルバダケブキとアサギマダラ>

 花崗岩のザレがすべりやすく下りは要注意。不動沢の崩壊が荒々しい。不動岳には8月に遭難したという21歳の青年の碑があり、21歳の初心者Sがビビる。怖いコワイと言いながらも船窪岳に達する。船窪岳は展望なし、日当たり良(^^;)、蒸し暑い。下って、ロープでよじ登った小ピーク(5万図の「窪」の字の所)で両側がガレた約2mのナイフエッジ(というほどでもないが)。

 船窪乗越を過ぎれば幕営地はすぐ。水場は10分ほど下った崩壊地の上部。船窪小屋泊まりの人も水を汲みに来ていた。KとSが小屋で買ってきたビールを水場へ冷やしに行く間に、おでんの準備。

槍ヶ岳 船窪小屋と北ア南部
<幕営地から槍ヶ岳> <船窪小屋と槍穂大天井>

 七倉岳:雲海の向こうに、八ヶ岳、富士、南アルプス北部が見えた。富士までの距離158km。反射600mmレンズにて撮影(^_^)。浅間山、四阿山も雲海の上に頭を出している。間近の針ノ木岳が南アルプスの甲斐駒のようにそびえている。

 北葛岳:近くに雲が湧いてくる。富士は何とか見える。距離158.1km。目の前の蓮華岳は南アルプスの聖岳に似ている。北葛乗越からの500mの登りは辛そう。

富士南ア遠望 蓮華岳
<北葛岳から富士と南アルプス遠望> <蓮華岳、コマクサの砂礫地を登る>

 七倉岳と北葛岳を越え、北葛乗越からは梯子の急登。下ってきた中高年おばさんグループは地獄だと言っていた。登り着いた蓮華岳山頂一帯はコマクサの天国。烏帽子岳・南沢岳・不動岳・北葛岳と各所にコマクサがあって、コマクサの山旅でもありました。もちろん、コマクサ以外の花も多く、帰ってからKは図鑑で100種近くを確認したと言っていました。

コマクサ(白花) コマクサ
<コマクサ(白花)> <コマクサと蓮華岳>

針ノ木雪渓
<針ノ木雪渓>

 蓮華岳:今回一番期待していた山。『続・展望の山旅』には田代博氏作画の、針ノ木岳〜立山〜鳴沢岳が描かれた展望図がある。私たちが山頂に着いたのは昼近かったため完全にガスに覆われていた。富士山はもちろん、縦走の締めくくりとして眺めたかった、烏帽子岳〜北葛岳もまったく見えなかった。一緒に行った初心者のSは、山頂から大町を眺めたかったと言っていた。展望が目的なら針ノ木峠からの逆コースにすべきだろう。コマクサの咲いた広い山頂部は、ここまで歩いてきたルートと比べれば、天国だった。

 針ノ木峠直下の急斜面で、Kのグリセードテクニックに感嘆する。その他3名はジグザグの夏道を歩き、ストックがわりの枯れ枝を拾って雪渓を慎重に下る。大沢小屋を過ぎた所の冷たい湧き水でティータイム。お土産に水筒にも。

 大町温泉郷「薬師の湯」に寄る。17時を過ぎていたため大広間で休めなかったのが残念。

***

 このコースは特別に危険な所はありませんでした。オーバーハングの岩はなかったし、崩壊の激しい所には必ず巻き道がありました。とは言っても、全体に花崗岩のザレがすべりやすく要注意です。雨の日に一人では歩きたくないコースです。船窪岳から船窪乗越の間が一番緊張するところでした。アップダウンが多く、1日の行程が長いこともこたえました。

 今年は天候に恵まれました(キツカッタケド)。三大急登の1つを登り、三名山の1つを 間近に眺め、三大峠の1つを通って、三大雪渓の1つを下るという、三大づくしの 山行でした。

Walstone

(1994/07/28記 Nifty-serve 旧FYAMA MES-5 #03511 and MES-13 #03920)