南ア北部地図

南ア:転付峠〜蝙蝠岳〜塩見岳〜北岳

 久しぶりに単独で南アルプス北部をしっかり歩いてきました。今回の予定は、二軒小屋〜蝙蝠岳と三峰岳〜野呂川越という、展望よりは樹林帯歩きでした。静かな樹林歩きを楽しむことと、まだ歩いていない所を歩く(つまり、地図に赤線を引きたい(^^;)というのが目的でした。ところが最終日まで続いたあまりの天気の良さに三峰岳から両俣に下ってしまうのが惜しくて予定を変更、間ノ岳〜北岳をまわってきました。予定変更は大正解で、最後の北岳に至るまで雲が湧いてこず、360度のパノラマを堪能することができました。

 第1日目の田代入口から第3日目の熊ノ平までは、4年前の anschanteさん (Nifty-serve FYAMAP MES-6 #2040)と同じルートです。

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 田代発電所から転付峠までの道は、ちょうど草の刈り払い作業中で、とても奇麗になっていた。いくつもある橋や階段はよく整備され、一つ一つにナンバープレートがつけられている。全部で80以上あった。作業されていた数名はみな年配の方だったが地元の山岳会だろうか、有り難いことだ。

 転付峠からの富士は雲で見えず。峠から二軒小屋へは急な下り。この日、擦れ違っ た登山者は一人だけだった。二軒小屋のテント場は他に2張りのみ。

 二日目。二軒小屋トンネルを出ると、左に仮設橋がつくられた千枚岳への迂回路を見送って、東俣へ。ここから、蝙蝠尾根にとりつく。最初は急だが、後は樹林の中のなだらかな登りが続く。なだらかなだけに長い。徳右衛門岳も樹林の中。登山道の50mほど先を鹿が横切る。

 ハイマツを一漕ぎすると突然、視界が開ける。目の前に蝙蝠岳、隣に塩見岳山頂。東には、4年前に歩いた白根南嶺がゆるやかに続く。悪沢岳方面は雲に覆われている。

 今日も蝙蝠岳を過ぎてから一人出会っただけで、雪投沢源頭の幕営指定地に到着。他にテント3張り(すべて単独)。

富士と蝙蝠岳 雪投沢と塩見岳
<塩見岳から望む富士と蝙蝠岳> <雪投沢(中央)と塩見岳(右上)>

 三日目。快晴。カメラ、三脚、水筒だけを持って、塩見岳へ。東峰、西峰のそれぞれで360度のパノラマ撮影(塩見岳西峰からのパノラマ [QTVR][JPEG])。両峰から、南ア北部と南部の立体視用写真を撮る。

南ア南部 南ア北部
<塩見岳から南ア南部> <塩見岳から南ア北部>
立体写真(平行法交差法 立体写真(平行法交差法

 北荒川岳を過ぎると樹林帯に入って、展望地はあまりない。正午、熊ノ平小屋に到着。小屋の前で髭のおじさんが話しかけてくるので誰かと思ったら、小屋主だった。小屋の人達は二軒小屋から熊ノ平までを一日で歩くという。それもチェーンソーなどを持って。また、熊ノ平小屋では小屋主の方針で、団体客は泊めないという。塩見小屋は完全予約制だという立て札があったし、昨年の仙丈岳馬ノ背ヒュッテも 予約客以外は泊めず、団体客に占められてしまうことがある小屋が多い中で、熊ノ平小屋は私には嬉しい所。今日はヘリでの荷揚げがあるから夕食はいいものだすぞ、と言っていたオヤジさんの誘惑を振り切って、幕営を申し込む。水場に近い良い場所を指定してもらう。

マルバダケブキ
<井川越付近のマルバダケブキ群落>

 四日目も快晴。ただし、風が強い。最初の予定では、三峰岳から、まだ歩いたことのない野呂川越までの仙塩尾根を通って両俣に下り、野呂川出合まで歩くつもりだった。しかし、この天気に展望の尾根歩きを見逃す手はない。幸い体調も悪くない。ということで、間ノ岳へ。

 間ノ岳では、いつもガスの中だったのが、6度目にして初めての快晴(間ノ岳からのパノラマ [QTVR][JPEG])。安倍奥、伊豆方面が雲に覆われている他は、ほとんど見える。甲府盆地も。

 中白根山で休んでいると、十数名の高校ワンゲルらしき一団が来て、二人いた指導者らしき人の年配の方が、この中白根山は北岳・間ノ岳と並んで3000m峰で、白根三山と呼ばれている、というようなことを説明していた。麓から見て中白根山までわかる人はほとんどいないと思うのだけれど。農鳥岳の立場はどうなるんですか、とは口出しできなかった。

 北岳まで来ても、まだ雲はそれほど湧いてこない。妙高戸隠方面の妙高山と火打山が頭だけ残して雲に覆われてきた程度で、北アルプスは白馬岳までバッチリ。恵那山から経ヶ岳までの中央アルプス、南駒ヶ岳の崩壊が白く目立つ。伊那谷の段丘地形まで見えていたような気がする。中アに重なった御嶽山、八ヶ岳の向こうに浅間山もわかる。(北岳からのパノラマ [QTVR][JPEG]

間ノ岳 大樺沢二俣
<北岳からの間ノ岳> <大樺沢二俣(左に仮設トイレ)>

 下りは、肩ノ小屋経由で大樺沢二俣へ。雪渓は二俣には既に無く、ずっと上流に残るだけ。今年の残雪は少ないように思う。間ノ岳の山頂部にも雪はなかった。噂に聞いていた登山者用トイレが見える。趣旨は良くわかるし、意義のあることだと思うが、登山道の対岸で、はたしてどれくらいの人が利用しているのだろうか()。

 広河原ロッジ前からの山梨交通甲府行きバスの客は、私一人だけだった。

[データ]

【日 程】1999年7月31日〜8月3日
【山域名】南アルプス
【山 名】徳右衛門岳、蝙蝠岳、塩見岳、北荒川岳、安部荒倉岳、三峰岳、間ノ岳、中白根山、北岳
【天 候】ずっと晴れ
【メンバー】単独
【地形図】1:50,000「身延」「赤石岳」「大河原」「市野瀬」「韮崎」
【タイム】
 第1日(実歩行時間6時間5分)
 身延駅7:20⇒8:30田代入口→9:40発電所→11:55保利沢合流点12:15→14:45水場幕営地14:50→15:05転付峠15:10→16:15二軒小屋
 第2日(実歩行時間9時間40分)
 二軒小屋5:50→6:15蝙蝠尾根入り口ー>11:15徳右衛門岳ー>13:05森林限界ー>13:45蝙蝠岳14:00→17:10雪投沢源頭幕営指定地
 第3日(実歩行時間5時間30分)
 雪投沢源頭幕営指定地4:55→6:00塩見岳6:45→7:25雪投沢源頭7:50→8:55北荒川岳9:10→11:15安倍新倉岳11:20→12:00熊ノ平
 第4日(実歩行時間7時間)
 熊ノ平4:50→6:05三峰岳6:15→6:50間ノ岳7:15→8:00中白根山8:20→9:40北岳10:15→10:50小太郎山分岐12:00→12:55大樺沢二俣13:05→14:35広河原ロッジ前

Walstone

(1999/08/05記 Nifty-serve FYAMAP MES-6 #14020)


(註)北岳大樺沢の仮設トイレ

 北岳大樺沢に山梨県が設置した仮設トイレについて、

「噂に聞いていた登山者用トイレが見える。趣旨は良くわかるし、意義のあることだと思うが、登山道の対岸で、はたしてどれくらいの人が利用しているのだろうか。」

と書きました。9/3づけの朝日新聞朝刊山梨版に、そのトイレについて次のような 内容の記事がありましたので、報告しておきます。

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 アルプス一万尺 トイレに感謝
 登山者に大好評
 「においがなくきれい」「山の中にトイレがあって助かった」といった感謝のメッセージが、トイレに置かれたメモ用紙に書かれていた。
 8月末からの1ヶ月半余りの期間に、2279回の利用があり、1回平均にして約37円のチップが入れられていた。
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 このトイレは、消化槽内の微生物が排泄物を二酸化炭素と水に分解するバイオ方式、というものだそうです。

(1999/09/03記 Nifty-serve FYAMAP MES-6 #14288)