残雪と薮の、経ヶ岳(中央アルプス)

経ヶ岳地図

 去年から残雪の時期に行くことに決めていた、中央アルプスの経ヶ岳に予定通り登ることができました。

 結論からいうと、経ヶ岳は充分な素質に恵まれながら、それを活かしきれていない、という印象でした。現在のままでは三役入りは難しいでしょうね。(このあたり『山岳展望の楽しみ方』80〜83ページ、田代版展望の名山番付を意識しつつ書いています(^_^;)。

 小縮尺の地図で経ヶ岳の位置をご確認ください。木曽駒ヶ岳の間近にあって、南アルプス北部〜八ヶ岳〜北アルプス南部〜乗鞍岳〜御岳山がつくる円の中心に位置しているではありませんか。標高も2296mと、3000m級の山々を眺めるにはちょうどよい高さです。登山者が少ないことを利点に数える人もいるでしょう。あえて難点をあげれば富士山が北岳と仙丈岳に隠されてしまうことでしょうか。

 以上のような条件に恵まれながら、その山頂は林の中。わずかに南方が開けていて南アルプスと木曽駒ヶ岳が望まれるだけです(山頂手前からの八ヶ岳と南アルプスのパノラマ)。救いは、山頂に続く東側の稜線が木立がまばらなことです。1点360度とはいかないものの、移動しながら見渡せば、上記の山々は勿論のこと、光岳以南の南アルプス、金峰山、浅間山、妙高戸隠、鹿島槍など北アルプス北部から、御岳の右には白山まで望むことができました。鉢盛山の向こうに昨秋登った霞沢岳が見えていたのも、私には嬉しいことでした。

木曽駒ヶ岳
<経ヶ岳から望む木曽駒ヶ岳>

【日 程】:1993年5月3日(月)〜5日(水)
【山域名】:中央アルプス
【山 名】:経ヶ岳(2296.3m)
【ルート】:横川渓谷黒沢谷登山道→黒沢山→経ヶ岳→権兵衛峠→与地
【入山地】:横川渓谷三級ノ滝登山道入口
【下山地】:西箕輪与地
【天 候】:曇り(3日)、晴れ(4日)、晴れ時々曇り(5日)
【同行者】:男2人
【地 図】:1:50,000 「伊那」
【記 録】
 第一日(実歩行時間 約7時間20分)
 甲府駅 7:24 ⇒ 8:47 岡谷 8:51 ⇒ 9:04 辰野 ⇒ 9:45 登山道入口 9:55 →10:05 三級ノ滝 → 12:00 林道 → 16:30 黒沢山分岐(黒沢山往復)17:10 → 18:30 鞍部(標高約2000m)幕営
 第二日(実歩行時間 約7時間40分)
 8:05 → 9:00 羽広登山道出合 → 10:40 経ヶ岳 11:15 → 15:40 北沢山(1968.9m三角点)16:05 → 19:00 権兵衛峠、幕営
 第三日(実歩行時間 約1時間50分)
 8:40 → 9:30 七曲り茶家の跡 9:55 → 10:55 バス停「与地南」

 辰野から黒沢谷登山道入口までタクシーで40分弱、5,270円。ミソサザイのにぎやかな鳴き声に迎えられる。黒沢谷は水量が多く、10箇所以上ある2本丸太の橋がほとんど水没しており渡るのに苦労する。黒沢谷コースは昨年の10月に信濃高等学校教職員山岳会によって復活整備されたばかりなので赤テープや「経ヶ岳登山道→」と書かれた標識が随所にあり迷うようなところはない。

 黒沢山の稜線の手前、標高約1,800m付近から残雪。雪は軟らかく、雪と翌日現われる薮に慣れていないメンバーの一人は消耗して、行動時間が予定をオーバーする。ただし、天気の心配とルートを間違える不安はないので気は楽。春の日の長さに感謝。

 黒沢山からは伊那谷と南アルプス、木曽駒ヶ岳方面を見通すことができる。

 経ヶ岳手前の鞍部、水場への下り口の標識のある所で幕営。伊那谷の夜景が美しい。

経ヶ岳 槍穂
<経ヶ岳.左に御嶽、右に乗鞍> <穂高岳と槍ヶ岳遠望>

 経ヶ岳山頂から西側のコルへは薮がひどく、御岳を目印に進む。権兵衛峠への稜線は現在では廃道となっている。先人の赤テープが所々に残っている。地形的に稜線ははっきりしており、尾根をはずさないように歩けば問題はない。ただし、肩から背丈ほどの笹薮の連続。全体に下りだからいいようなものの逆コースを登る気はしない。山溪4月号45ページに昨年11月の記録があり、「北沢山の先まで来ると、ようやくササヤブこぎから解放され、歩きやすくなってくる。」と書かれているが、そんな期待は空しく峠に近づいても薮の連続。

 権兵衛峠の真上、太平洋と日本海の分水嶺上にテントを張る。

 黒沢谷で雪のため引き返してきた軽装の3人連れと出会っただけの静かな山旅でした。

Walstone

(1993/05/07 and 08記 Nifty-serve 旧FYAMA MES-5 #087 and MES-10 #002)