転付峠から残雪の笊ヶ岳へ

笊ヶ岳地図

 笊ヶ岳から南北にのびる稜線は、大井川をはさんで赤石岳・聖岳と向き合う位置にあり、北アルプスの槍穂高に対する蝶ヶ岳〜常念岳と同様な位置関係になります。期待していた南アルプス主峰群を眺めながらの縦走は、残念ながら無理でした。稜線は森林限界以下で山は木の間越しに覗かれる程度です。しかし、天候に恵まれて笊ヶ岳山頂からの展望は圧巻でした。

【日 程】1992年5月3〜5日
【山域名】南アルプス
【山 名】笊ヶ岳(2629.0m)
【天 候】晴れ
【メンバー】男4人
【地形図】1:50,000「身延」「赤石岳」
【タイム】 第一日(実歩行時間5時間45分)
 身延線身延駅前7:10⇒8:35田代入口8:40→9:55早川第三ダム10:05→12:55保利沢小屋13:10→13:50尾根への取りつき(標高1,480m)14:00→ 15:20峠手前の水場15:40 →15:55林道のトイレのある広場で幕営
第二日(実歩行時間9時間10分)
 6:55→12:55天上小屋山(稜線が最も西に張り出したところの山2,429m)13:00→14:50生木割15:00→15:30這松尾との鞍部15:45 → 16:00這松尾16:10 → 18:00笊ヶ岳の手前標高2,400m付近にて幕営
第三日(実歩行時間8時間30分)
 6:00→7:05笊ヶ岳(小笊往復30分)9:25→布引山との鞍部9:30→10:35布引山10:50→16:20奥沢谷(標高900m)16:35→ 17:15車道終点 → 17:40老平 ⇒(タクシー)⇒身延線下部温泉駅

第一日
 新倉の集落を過ぎ、田代入口でバスを降りて内河内川沿いの林道を行く。途中、糸魚川静岡構造線の断層露頭を眺める。早川第三ダムのある広河原までは車で入れる。古い地形図には、広河原から西の沢を行って峠を越える道がのっているが、現在は使われていないようだ。案内板に従って内河内川を忠実にたどる。新緑が美しい。地図にある道が尾根を越えて上流で川と出会うところの吊り橋は壊れていた。転付峠までは特に問題なし。残雪はほとんど無い。ここは悪沢岳方面に向かうクラシックルートで、滝も多く、とても雰囲気が良い。尾根に取りついて、標高2,000m付近から残雪あり。峠の手前に水場あり。小平地にテント3〜4張可能。ここから峠に向かって5分ほど登ったところが富士山を眺めるには最高。転付峠の林道は意外に車(工事関係?)が通る(車に注意の看板あり)。林道沿いのトイレのある広場で幕営。

内河内川 笊ヶ岳
<新緑の内河内川> <生木割〜偃松尾鞍部からの双耳峰、笊ヶ岳>

第二日
 天気はまずまずだが、森林限界を越えていないため大展望とはいかない。木の枝がじゃまになって、特にザックが大きいと大変。ザックの上にくくりつけたマットが枝にこすられてボロボロになってしまった。保利沢山の南で尾根が西に曲がっているところで、南の尾根に間違えて進んだ踏み跡がある。生木割山頂と這松尾南の鞍部には平地があり、幕営可能。笊ヶ岳山頂に幕営の予定だったが、体重の多いKが一歩ごとに雪を踏み抜いて体力を消耗したため、標高2,400m付近で雪をならして何とかテントを張る。甲府盆地の夜景が美しい。

小笊と富士 ヤマイワカガミ
<小笊の上に富士> <ヤマイワカガミ>

第三日
 快晴。笊ヶ岳山頂からの期待していた大パノラマが広がる(笊ヶ岳からのパノラマ)。南アルプスの3,000メートル峰のすべて(北岳・間ノ岳・農鳥岳・仙丈岳・塩見岳・荒川三山・赤石岳・聖岳)と、北は鳳凰山、南は光岳・大無間山など南アルプスの主要な山が見える。主な山で見えないのは甲斐駒ぐらいか。そのほか、富士山はもちろん御坂・奥秩父方面の山々。鳳凰山薬師岳の右には赤岳(八ヶ岳)の山頂がわずかに頭を出している。赤岳の頭はごくわずかで積雪期でないとわかりにくだろう。小笊からだと東側の稜線(真教寺尾根)が見えた。南方は雲がでていて伊豆半島などは見えなかったが、沼津から由比にかけての海岸線を望むことができた。眺めを楽しみながら布引山へ。このあたりも幕営可能。布引山からの下りは、南側の布引崩れの縁を南南東に向かい、標高2,300m付近から東に向かう稜線をたどる。地形図でもわかるように、このあたりはかなりの急傾斜。笊ヶ岳山頂(2629m)から老平(500m)までは 2,100m 以上の標高差になる。斜面に中部地方太平洋側特産といわれるヤマイワカガミの群落あり。奥沢谷には橋がなく渡渉。奥沢谷沿の道は、黒部川下の廊下の水平歩道のようなところがある。典型的なV字谷。Kが足を痛めたため下山に思いのほか、時間がかかる。林道に出たところにいた軽トラックに乗せてもらって老平へ。民家で電話を借り、タクシーを呼ぶ。

Walstone

(Nifty-serve 旧FYAMA MES-4 #266 (1992/05/11), MES-5 #162 (1992/05/14) をもとに書き直し 2000/03/22)


 実業之日本社発行、藤本一美・田代博編著『続々展望の山旅』の120ページ「笊ヶ岳」の項に、似たような記述があります(^^;ゞ。御覧ください。